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2007年01月30日

一生命懸け

 今から約20年前、淡路島の南端に位置し大鳴門橋のたもと、対岸の徳島とは海峡をへだてたところにあるホテル・アナガで宿泊した際のことであった。あまり大きくもなくおしゃれなホテルで、私はこのホテルを好んでいた。年初はリニューアルのため休業するとの案内が昨年末届いた。と同時に、コクヨの社長黒田章裕さんが産経新聞の連載で記事を書かれていたので思い出したことがあった。

 ホテルで夜の食事を終えロビーのラウンジでくつろいでいると、隣のソファーで4、5人がひとりの人の話を熱心に聴き入っているのであった。ソファーは広いフロアーにゆったりと置いてあり、隣までは少し距離があった。私たちがそのソファーに座る前からそのグループがそこに居たのか、或いは後から来られたのかは覚えていない。それほど、初めは気にしていなかったのであるが、ある時点から妙に気になりだしたのである。こちらは4人で取り留めのない話をしていたのであるが、こちらのことなどもうどうでもよくなり隣の話がとても気になって、失礼ながら聞き耳を立ててしまったのだった。なぜかというと、その中心人物の話がとても興味の引く内容だったからである。そうなるともうこちらのことなどどうでもよくなり、身体は自分でもわからないうちに半身が隣のソファーに向いている状態だった。

 半身がそちらに向いていて、その中心人物も話しながら私が話しに聴き入っていることがわかったのであろう、「あなたも良ければこちらに来なさい。」と、声を掛けてくださった。声を掛けられた途端びっくりして、聞き耳を立てていた自分の行儀の悪さに気づいたが、厚かましくも喜んでそちらのソファーへ行った。今度は聞き耳を立てる必要などなく、正面からその人のお話を聴くことができるので嬉しかったのを覚えている。 

 すべてがとても含蓄のあるお話であったが、中でも記憶しているのは、「一生懸命」と言うことについてである。自分は、社員が謝罪の際や何かの折りに、「一生懸命頑張ります。」などと言おうものなら、「君、一生懸命と言う言葉を不用意に使うな!一生懸命とは一生命懸けと書いて、一生懸命なのだ。君は本当に一生、命懸けで頑張れるのか!」と叱責する、とのことであった。言葉は少し正確ではないかもしれないが、ニュアンスはこのようであったと思う。なるほどなあ、一生懸命は一所懸命とも言う。一所懸命とは一カ所の領地を武将が命をかけて守り抜くことと何かで読んだ。おもしろいなあ、と感心した。

 いろいろ話してくださった後、「あなた、一度会社へ遊びに来なさい。」と言ってくださったが、その後お伺いすることなく現在に至っている。その中心人物が誰あろう、現会長の黒田暲之助氏だったか、或いは初代の社長であった。くつろいだ場所でのことであったので名刺交換を言い出せず、新聞の連載を読みながら懐かしく思い出したのだった。すばらしい方だった。大変な僥倖であり、可能ならもう一度お会いしていろんな話をお伺いしたいものだと思う。

投稿者 golf : 2007年01月30日 14:23

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